夜。アイクの部屋。ベッドの上。胡坐をして向かい合う男二人。
むろん、アイクとスネークだ。
*
腕を組んだアイクと、何かを言いどもるように目を逸らしているスネーク。
空気はやはり決して甘くない。この二人、恋人同士でありながら、夜は決して甘い雰囲気にはなりえなかった。ピリピリ張り詰めているのは刺すような緊張感と寒々しい空気だ。
スネークは、やっと決心がいったのか、アイクへ向き直ると、誠心誠意をこめて、言う。
「ヤらせてください」
きっとこの男、意地やプライドなどどこかへいってしまったに違いない。土下座までしてみせたスネークの心意気はある意味天晴れだが、向かい合うアイクはあくまでも無表情で組んだままの腕も下ろさないし、スネークを見下ろす青い双眸はどことなく冷たかった。
「言っただろう?」
アイクの声音は、あくまでも平淡だった。
「俺は、営めん」
それともあんたが下になってみるか、と身を乗り出したアイクを必死に留めて、スネークは恋人に訴える。
「あれからもう何日してないと思ってるんだ」
「一週間。あんた、まだ7日しかたってないくせに何言ってるんだ」
「頼む、アイク。あのときのお前の痴態が忘れられない」
「やめろあんた痴態とか言うな気持ち悪い一人で抜いてればいいだろッ」
どうやらこの二人にとって手と手をがっつり組み合わせての押し倒しあいは毎回のことらしい。力が均衡しあっている二人の両手はブルブル震えている。また前回のように、とスネークは一瞬考えたが、同じ手が二度通用するとは思えない。アイクの目はスネークを探っているように見据えてくる。迂闊な行動は命取りになりかねなかった。
ここはひとつ、体勢を立て直すべきと見た。
「アイク」
「なんだ」
「まずは少し、落ち着いて話そうか」
*
取っ組み合いを解いて、また先の状態に戻る。ベッドの上に胡坐をかいて腕組をするアイクと、正座でアイクの様子を伺うスネークと、まさに滑稽としか言いようのない光景ではある。
スネークは年甲斐もなく拗ねたような声で言ってみせた。
「・・・お前もヨかったろ、この前の」
「・・・・・・・・・・それなんだが、」
アイクが、怪訝に眉をしかめる。
「どう考えても変だった」
「なにがだ」
「・・・・・、」
「アイク」
「・・・気持ちよかった、のは認める。でも、あれは、気持ちよすぎた」
当然だ、媚薬が入っていたからな。とは当然言えない。戸惑っている様子のアイクにそんなことを言ってみろ、じゃあ今度は俺があんたに使ってやる、と本気で押し倒されそうだ。冗談じゃない。
スネークはアイクを刺激しないように自然に自然に顔を近づけて、気付いたアイクが顔を上げた瞬間に掠めるようにキスを落とす。気障ッたらしいと自分でも思うが、アイクはこうした軽い接触を不意打ちでされると弱い。
案の定一気に顔が赤くなって手の甲を口元にあてがったアイクに笑い、スネークはその耳元にささやく。
「それだけ、俺たちの相性がイイってことさ」
相性は悪くない、と思いたい。媚薬に頼ったからなんともいえないあたり、男としての情けなさを感じたが、そんな感傷は今は無視だ。
アイクが嫌そうに見上げてきたが、スネークは余裕っぽく見える笑みを意識して浮かべ、顔を近づける。今の雰囲気を逃したら、多分これからずっと愛を営むことなんて出来なくなる。
「なぁ、アイク・・・?」
「・・・・・・・・・・、」
黙り込んで不本意そうな目をするアイクは、スネークに口付けられて舌を入れられても、噛み付くことはしなかった。
*
ベッドの上でうつ伏せにされて、尻だけ高く上げている。屈辱すぎる格好だ。
それでもアイクはヒクッ、と震える両腕に顔を埋めて、必死に快楽を耐えていた。
くちゅくちゅ音が聞こえてくるのは、自身の奥まったところから。3本揃えて入れられたスネークの指が熱くて熱くてしょうがなかった。
結局、アイクはまた、快楽に溺れていた。
スネークが前も使ったローションの甘い香りに頭の中が朦朧としている。いれられた指が、遠慮なしに抜き差しされて、アイクは全身をビクビクと跳ねさせた。
「ふ、ぅ、ぅぅっ、んっく、んっんっ、ぅ・・・ッ!!」
せめて声を出すまいと、頭の横に垂れたバンダナの端をかみ締める。くぐもった声がひっきりなしに漏れた。
スネークの指は、前回と比べてまるで無遠慮だった。大胆になったというか、余裕が出てきたというか。
アイクのイイところも把握してしまったらしく、ソコを集中的に突き上げられてはアイクは意識が飛びそうになる。どうしよう、ものすごく、イイ。
ずるずるに蕩けきった内壁は、もっと強い刺激を求めるようにひくついている。なにを求めているか、アイクはわかりきっていた。
それを口にするのに抵抗がないといえば嘘になる。それでもアイクは、もとから羞恥が薄いのもあって、すんなりとそれを口にした。
「スネー、ク、もう、いい。・・・さっさといれろ・・っ」
「・・・命令デスカ女王サマ?」
可愛げのないおねだりをスネークは揶揄ったが、アイクは無言で睨んだだけだった。正直余裕がないのだ、アイクは。
スネークは肩をすくめて埋めていた指をまとめて引き抜く。くぽっ、とローションで湿った中が音を立てたのを、アイクは気付かないフリをした。
すぐに、後孔に熱いモノが触れる。期待するように穴がヒクついて、アイクは長く息を吐いて出来うる限り力を抜いた。前回もそうだったがローションのおかげで痛みはあまりないが、それでも力を抜いていると楽だ。
事実、スネークの自身はすべるようにアイクの中へ納まっていく。ただ、圧迫感はあるし異物感もものすごいから、アイクはとにかく耐えるしかない。ビクビク体が震えるのを止められるはずもなく、口にくわえたバンダナをかみ締める。
「・・・はっ・・・、熱いな・・・」
「・・・・・・・・・・ぅー・・・、」
スネークの男らしく低く艶のある声に、熱が上がる。早く、動け。そう思ったが、スネークは動かない。
収縮する内壁の感覚を味わっているのかもしれないが、アイクからしたら物足りなくてしょうがなかった。
やっぱりおかしい。
自分の体のことながら、この疼きは異常だ。もともと性欲の薄いアイクは、ここまで激しい欲求をしらない。カラダの相性がいいから?本当に、それだけなのか?
「ッ、ぅああっ!」
「なに、考えてるんだ・・・?」
突然奥まで突き上げられて思考がはじける。思わず顔がのけぞって声が出たが、自分のモノじゃないような声を聞くのがアイクは嫌で、慌ててバンダナを口にくわえようとする。
「声を殺すな」
「ぅ゛、ぐ・・・ッ!」
グイ、とバンダナの端を後ろから引っ張られ、頭が上がる。呼吸がうまく出来なくて、喉がヒュ、と音をたてた。苦しい。声が出ない。
睨みつけて抗議してやりたいが、バンダナが引っ張られている今、無理に振り向けない。唸り声ばかりが出る。スネークが笑う気配がして、この野郎ぶっとばしてやる、と朦朧としながら乱暴に思った。
苦しさにアイクが喘いだのを見て満足したのか、スネークはバンダナを手放し、腰を好き勝手に動かす。そうすればもうアイクは声を殺すのも忘れたようで、強い快楽に啼いた。
「っあ、あ、あっああっ、ク、スネ、ッく、もっ、ゆっくり・・!!」
「ふ・・・ッ、これくらいが、ちょうど、いいんだろう?」
言って、ぢゅぷっ、と音をたててアイクのイイところへ自身を押し当てる。
「ひァ゛あああっ!!」
意外に日に焼けてない背がくっと反り返って、刺激が強いことを訴えてくる。
誘われるようにしっとりと汗ばんだうなじに口付けて、腕を回してアイクの胸元を撫ぜる。突起に指がひっかかる感覚を楽しめば、アイクはシーツに額を押し付ける。
「ゃっ、そこ、っは・・・、ぁ、あぅ・・・んん、」
スネークの指は例のローションに塗れている。ぬる、と撫でられた乳首がしびれるように熱を上げた。くりくり指で弄られるとたまらない。
胸元へのもどかしい刺激と、そのもどかしさを煽ろうとしたのか、ゆっくりうねる様にかき回されている内壁。快感は体中に燻っているのに、圧倒的な刺激が足りない。
「あ・・・・・、」
なにが足りないのか、アイクはわかっている。ヒクヒクと物足りなそうに震えている下肢の様子がわかるから。最初のうちに軽く触られた程度で放っておかれているソレを、弄ってほしいのだ。
無意識にゆるゆると腰が揺れていた。拙くも淫らな動きに、スネークは笑う。
「どうした、アイク。腰振って」
「・・・ぁ、スネ、ク・・・ッ」
声が縋るように掠れたが、スネークはニヤニヤ笑うだけだ。この男、きっとアイクの言いたいことなどわかっているくせに空っとぼけている。なんとも言えず悔しくなってアイクは両拳を握り締めた。
それでも、甘い香りにおされる様にしてアイクは言う。
「・・・・・さわれ」
「どこを?」
「わかってるだろうがッ・・・・・」
「さあなあ・・・」
これが終わったら一発、この男に大天空を見舞ってもきっと罰は当たらないと思う。
いい加減苛立ちが募ってきて、その上スネークはまだゆるく胸と後ろに刺激を与えてくるし、さっさとイきたいのに後ろだけでイけるはずもなく、スネークはアイク自身を弄る気はない、らしい。
まどろっこしい。
アイクは、片手を下肢へ伸ばすと、震えている自身に触れた。
「っん・・・・・、」
「・・・お?」
スネークは面白そうに眉を上げた。
男に貫かれておきながら、自身を慰める。それをしているのがあのストイックなアイクだというのだからそうとうキているのだろう。かくいうスネークも、アイクが自身を拙く擦り上げ、はっ、なんて熱く息を吐いているのを見ると、グッとクるものがある。
アイクの中に収めたままの自身も、内壁にイイ具合に締め付けられている。焦らしていたつもりが、逆にこちらが焦らされているようだ。そうも誘い込むように締め付けられたら、動かないわけにはいくまい。
スネークは思い切り一度突き上げて、それからはもうガクガクとアイクを揺さぶった。
「ひァあッ!? あっ、あ、ぅあ、あ、あっ・・・!」
強い快楽で、手に力が入らないらしい。アイクの手が添えられていたソコから離れかけたのを見て、スネークは腕を伸ばすとアイクの手ごとそこを包み込む。
「手伝ってやろうか」
「ッふぁ・・・、」
握りこんだ手が強張るのを感じる。かまわず、上下に激しく擦りあげる。
「っは、あああっ、スネッ、ク、スネークっ、くぁ、あ、あっ、あ・・・!」
「イきたいんだろう? ちゃんと、弄ってやれよ」
たとえば、そう、先端も弄ってやって。囁きながら先走りですでにぐっしょり濡れている鈴口をぐりぐり、親指を動かす。
腰のほうもそれに合わせてグイと深く突き入れてやれば、跳ねるようにして背を反らして、声もなく、いや、声にならないのか、アイクが達した。前も思ったが、その瞬間の締め付けは並じゃない。自身の射精を促すように内壁に蠢かれては、たまらない。誘われるままにスネークも低く呻いてアイクの中へと精を叩きつける。
あとは、互いに荒い息を吐きながら、スネークはぐったりしたアイクの髪を撫でて、キスを送る。
軽く舌を絡ませて、離す。そうしてうつ伏せになっているままのアイクをひっくり返して、見下ろして。
濡れた青い目と視線が合って、もちろんそのまま、もう一戦。
また機嫌を損ねられるかもしれないが、腰を突き上げてやればアイクは満更でもないような恍惚めいた顔をする。嫌じゃないのだろうと勝手に解釈。
案外、本当に体の相性はいいのかもしれない。