0.前書き

ノリと勢いだけで書いてみる、ゆるいリンクとアイクのお話。
×より&の雰囲気の、短文の並べ連ね。

ぽつりぽつりと進んでいきます。









1.省エネ運動とか、言われても。

「なあ?」
「ぬん?」
本日付けでメデタク同室になった相手は、ただ目をわずかに開いただけだった。
「・・・聞いてた?」
「ああ、聞いてた」
「嘘だお前、絶対他のこと考えてただろ」
「いや、聞いてた」
頑なに首を振る同室の男は、そこで困ったように眉をよせて、
「ただな、しょうえね・・・?ってのは、なんなんだ?」
「・・・・・」

地球にやさしい、ケチな取り組みのことだよ、とは言わんけど。



コトのきっかけは、マスターハンドが突然宣告した『省エネ運動』宣言。それによって、一人一部屋与えられていた自室は取り上げられ、まさかのルームシェアが始まったのが今日この日。
ドアの前でリンクとアイクは顔を見合せた。
手は同じようにドアノブへ伸びていて、言葉がなくともそれを悟る。

ああ、お前か。

と。
リンクもアイクも、お互いの面識や交流は薄かったが、お互いこれといった感想があるわけでもなく、特に不満もなければ特に喜色もない、至極淡白な顔合わせだった。

「まあ、・・・よろしくネ」
「ああ、よろしく頼む。・・・。・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

結局その日、記念すべき同室初日にも関わらず、何の盛り上がりもなかったけれど。





2.マルスって、

「アイクと仲良かったよな」
「そうかな」
「そうだよ。少なくとも会話が続くだろ」

もう一度、「そうかな、」と頭を傾げる。
マルス自身はアイクと仲が良いつもりだが、当のアイクがどう思っているのかを考えると怖いから、リンクの突然の問いを濁す。
人間関係とはどうも複雑らしいもので、情けない顔をしてマルスの腕を掴むリンクは只今どっぷり苦悩中らしい。
「会話が続かないわけ?」
「間が持たないんだ。オレ一人ばかり居心地が悪くってさア」
そのくせ奴は平気な顔で黙ってるし。
愚痴をこぼすリンクに、マルスは斜め上を見上げる。思い浮かべるのは今話題になっている無愛想な男の顔。
でも、
「彼はそんなに無口だったかな」
「何も喋んないわけじゃないさ、そりゃ。話しかければ反応だって返した、けど。けど。なあ?」
「・・・なんだっていうんだい?」
「もっと・・・、そっちからも・・・話しかけてくれたっていいだろ・・・」
参った、と言わんばかりの様子に、マルスもさすがに哀れに思えてきた。

でも。

(アイクはそんなに無愛想だったかな?)
即座に頭に浮かんだ仏頂面に、ああそうだったかも、とマルスは曖昧に首をかしげた。





3.おいおい、

「リンク?」
「・・・」
「おい?」
「・・・・・・」
「あんた、」
「・・・・・・・・・」
「本気か?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

アイクは瞬いた。本日付けでメデタク同室になった相手は、枕に顔をどっふり埋めている。思わず、研いでいたラグネルを脇に置いた。
単調に刃を研ぐ音が響いていたから、眠くなったのか。ああ、そうか。それはわかった。
けど、アイクは解せない。
だってリンクはつい今さっき、その瞬間まで口を開いて喋っていたのだ。話題は“しょうえね”。親切と言おうか健気と言おうか、とかく人の良いリンクがしょうえねを説明するのを右から左へ聞き流していたときだった。
BGMにしていた、存外に耳に馴染む声が、ぱったり止まった。
実は話の大半を聞き流していたアイクだったから、リンクがついに怒ったと思った。ラグネルを研ぐ手は止めない。しやしやとささやかな音が響く。リンクは一声も発しない。5分程度は、研ぎ音だけが部屋を充満していた。
5分。
リンクは黙り通している。アイクは訝しんだ。ようやく訝しんだ。沈黙しているリンクに、(無口な男だな、)なんて思いながら。“しょうえねってのはなんなんだ?”以来一言も喋っていない男にそんなことを思われるのは、リンクとしてもこの上なく不本意なことだろうが。
アイクはようやくラグネルから顔を挙げた。目を瞬かせ、冒頭のやり取りへ話は戻る。
枕に顔をうずめてしまっているリンクの顔はうかがえないが、規則正しく上下する背中と、枕でくぐもったと息を聞くに、確実に寝ている。息苦しくないのだろうか、と思ったが、まあアイクが気にすることでもない。だがアイクにも他人を思いやる気持ちはある。こう見えて情にも厚い。折角同じ部屋になったんだしな、と思ったかどうかは定かではないのが、アイクはおもむろに立ち上がる。のそのそリンクに近づいて、リンクの下敷きになっている掛け布に眉を寄せる。アイクは玄人ではないから、リンクを寝台から落とすことも、ビリリと破くことなく掛け布を引き抜くことはできない、たぶん。良く寝てるから無理に起こしてやりたくもない。
しかしリンクをこのままにしておいたら風邪をひく。と思ったのだ、アイクとしては。
フィギュアが風邪をひくか?とか、むしろリンクが風邪をひくタマか?とか、そんなところには突っ込んではいけない。
アイクは本気だった。
他にかけてやるものは、と目を巡らせて。



「俺のをかけてやったんだ」
「優しいじゃないか」
「俺は優しいぞ?」
知らなかったか?、とでも言いたげに首を傾げるアイクにつっこむべきか悩んで、結局、マルスは目を逸らしてつっこみも逸らす。
「要するに、君はリンクを無視してたわけじゃなくて?」
「したつもりはない。話す意思だってある。が、な?」
「なに」
「気付いたら寝てるんだ、あれは」
「ううん・・・」
リンクからの愚痴めいたものを、当然のようにマルスは本人に伝えた。他愛ない話だ。本人に言ったところで、繊細さのかけらもない男だから、傷ついたりもしない。傷付くほど上等な心なんて持っていないだろうし。
その鈍い男はぶ然とした顔で腕を組んで、マルスを見据える。
「俺が話さないわけじゃなくて、向こうがさっさと寝てしまうんだ」
「ううん・・・」
マルスは再度うなる。

なんだろうこのすれ違い。

とりあえずなにが必要かって、
「まずは話し合いなよ、君ら・・・」

即座に、「誰とだ?」なんてボケを返すアイクの頭をペシッと叩く。
アイクは一見無愛想に見えるけど、こう見えて案外、天然でボケをかます子だから、きっとリンクも仲良くなれるよ。心の中でだけリンクを励ます。


きっといいボケとツッコミになると思う。それは口には出さないけど。





4.話し合いなよ君ら、とマルスが言うので、

リンクは腑に落ちない気分になりながら、慣れた自分だけの自室ではなく、気が重いルームシェア用の自室へ向かっていた。話し合えも何も、向こうに話す意思がないからオレはこんなに困っているのに。あんなに居心地の悪い自室もそうそうない。
それでもリンクが他人のお節介を無碍にすることはない。というより出来ない。折角、マルスがアイクに話を通してくれたらしいのだ。きっとアイクだって、今日はオレと会話しようとしてくれるはずだ。じゃなきゃマルスの面目が立たない。そうだろう?
自分に言い聞かせるあたり、リンクも相当昨日の沈黙が堪えたらしい。いっそトラウマだ。果たしてアイクに対してのこの苦手意識が拭えるのか、先行き不安にリンクの足取りも重くなる。
ただ、歩いて先に進んでいる限り、必ず終着点はやってくる。本来は気兼ねすることがないはずの自室の前に立って、リンクは少し戸惑った。なんで今になってルームシェアなんて始めたのだろう、あの右手は。八つ当たりめいたものさえ抱く。

「――よし」

気合を入れて、ドアを開いた。瞬間、回れ右したくなったのは、リンクをまっすぐ睨みつけてくる、強すぎる視線があったからだ。
アイクが、仁王立ちの姿勢で鋭い青目を向けて、そこに待ち構えていた。





5.とりあえず手持ちのアイテムを整理する、

・・・フリをしているリンクは、精一杯の無表情で淡々と手を動かしていた。が、内心冷や汗でダラダラだったりする。
なぜなにどうしてって、理由は一つしかない。手を動かしながら、視線だけをチラリと動かす。途端、青目と目が合って、一気に冷や汗が増した。当然かなり慌てはしたが、そこは勇者。慌てた素振りを見せることなく、不自然じゃないように、あくまでさりげなくさらっと視線を流す。だが、どんなに上手く目を逸らしても、無言で向けられる強い視線は変わらずリンクに向いていた。

こんなに居心地の悪い空間があるだろうか。いや、ない。あってたまるか。

友好的な関係を築かなければならないはずの同室人が、無言で睨み続けてくる、この惨状。
――なあマルス、お前、アイクに何を言ったんだ?
心で泣きながらリンクは、他意のない笑顔を浮かべる友人に問いかける。生憎、その友人は今この場にはいないから、返事が返ることはない。きっと今頃、マルスはどこか違う場所で、「ぃっぷし、」なんて間抜けなくしゃみをしていることだろう。

相変わらず、アイクの視線は逸らされない。
いい加減、手元のボムがリンクの顔を鏡のように映し返すくらい、テカテカのピカピカになったところで、ようやくリンクはその手を止めた。またアイクを見やれば視線が絡むが、じっと見つめてもアイクが口を開く気配はない。

今日は、リンクから口を開くつもりは毛頭ない。
また黙って聞きの態勢に入られたら今度こそ逆上してしまいそうで怖いし、何よりアイクのほうから口を利いてほしかった。
いっそ切ないほどの頑なな気持ちを抱いて、今の今まで耐えたのだが、アイクはじっと睨みつけてくるだけだ。なんのアクションもない。居心地の悪さも相まって、気分は右肩下がりに低下していく。
「・・・・・」
「・・・・・」
しばらく睨み合ってから、リンクは諦めた。はぁ〜、とあからさまにため息をついて、項垂れる。

――部屋替えとか、無理なんかな・・・。

本気で思案しながら、ベッドに乗り上げた時だった。
アイクがカッと目を見開いて、立ち上がったのは。

「ぅ、わっ・・・!?」
「あんた、」
突然、強い力に腕を掴まれる。とっさに姿勢を崩して、リンクの体がベッドの上へ投げ出された。ギシッとスプリングが悲鳴を上げる。続いて、アイクが覆い被さるようにベッドに上がってくる。真上から鋭い眼光に見下ろされて、リンクは息をのんだ。心臓がドッドッと音をたてている。なんだ、なんなんだ、なんだってんだ!?

「マルスから話は聞いた」
「あ、ああ・・・」
「俺たちはもっとお互いのことを知る必要があるらしい」
「へ、ぇ・・・?」

ちょっと待て、待ってくれ。なにか、雲行きが怪しすぎやしないか?
マルスお前、本当に何を吹き込んだんだ、この厄介な男に!

なんたって姿勢がマズい。全身から嫌な汗が湧いてくる。はた目から見れば男に押し倒されている現状の情けなさに、リンクはいっそ泣きたくなった。とっさに混乱して抵抗も出来ない。
アイクの仏頂面も、こんな間近で、こんな態勢で見てみれば、ものすごい迫力がある。思わず息が詰まる。掴まれている腕が熱くて仕方ない。切羽詰まって混乱するリンクの様子に気付きもしないアイクは、欠片も愛想を見せない顔で、爆弾発言を続けるのだ。

「俺はあんたと打ち解けたいと思ってるんだ」
「あ、あ。言いたいことは、わかった。わかったからさっさと、」

オレの上からどいてくれ。
リンクがそれを声に出すより早く、アイクは続ける。

「そういうわけだから、今夜は俺に付き合ってもらうぞ」
「――――」

待て待て待て待て。どういうわけでそういうわけなんだ。今夜って、お前。付き合うって、お前。
喚きたいが、リンクの口はパクパク開閉するばかりだ。混乱しきったリンクの顔は真っ青で、潤んだ目には涙さえ滲んでいる。哀れだった。

そんな哀れなリンクにトドメをさすように、アイクは、


「今夜はあんたを寝かせない」


この上ない真顔で、そう告げたのだ。
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