思いつく場所をすべてあたっても、アイクはどこにもいなかった。
散々走り回ってさすがのスネークも息が上がっている。結局アイクの部屋に戻ってきてしまったが、やはり姿のない部屋の主を思って荒い呼吸に混じってため息を零す。
アイクはどこに行ったのだろうか。
これだけ探して見つからないのだ。スネークは頭を抱えた。もしマルスがアイクを見つけていたらどうしよう。
マルスは乗り気のようだし、アイクはスネークが原因で傷心だ。優しくされてアイクの心が移ったとしても、なんと文句を言っていいものかわからない。
ベッドに腰掛けて落ち着いてみれば、重苦しくため息も出るというもの。
ああアイクちくしょうアイク、可愛い可愛いあんちくしょう、どこに行ってしまったんだ。
俺が馬鹿だった。お前のピュアーな心をくだらない邪推で傷つけてしまうなんて。畜生俺のこん畜生。
そんなに怒っているのなら、土下座でもなんでもしよう。泣いて頭を下げてみっともなく弁明だってしてやろう。
だから頼むからマルスなんかや他の奴にころっと絆されないでくれ。
無理無理無理だアイクが他の奴のものになるのは無理だ死んでしまうあああアイク、どこにいる!?
怪しいことに、心の声がぶつぶつ外に丸ごと漏れてしまっているが、それも致し方ない。今のスネークに余裕など一切なかった。先にマルスから聞いた話もあって、アイクへの愛しさが止まらない。いっそ狂気を感じるくらいにアイクアイクと繰り返す男の姿は、それはもう見るに耐えないものだった。
小さな穴からそれを静観していたその人も、居辛くなってついつい身じろいでしまうくらいだ。
ガタ、と小さくなった物音に、過敏に反応してみせたスネークはばっと顔を上げた。
視線の先には、ダンボール。
いつかスネークが夜這いをかけた日に回収を忘れていった、スネーク愛用のダンボールだ。
「なんだただのダンボールか」
そこに探し人の姿を期待していたスネークは、思い違いにまた深くため息をついた。ややもせず、再びアイクアイクと呟き始める。
そうしているとすぐに、ガタンとまた物音が鳴った。スネークが顔を上げるとやはりそこにはダンボール。
「・・・・・・・・・・」
しばらく見慣れたダンボールを見つめ、彼は漸く
「まさか」
気付いて、立ち上がった。情けなく手を震わせながらダンボールを取り払う。
果たして。
「・・・・・アイク・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
そこに、まさしく探し人の姿はあった。似合わない体育座りなんかして、縮こまっている。
そうしながらも無言で責めるような視線を寄越してくるのだ。常人からしてみれば可愛げが一切ない顔であったが、愛しさが極まったスネークからしてみれば膨れて拗ねている可愛い顔だ。
込み上げる愛しさのまま、ぎゅうとアイクを抱きしめる。
うぐ、と苦しそうに声を上げてアイクが足掻くものだから、抱き心地の悪さを少し堪能してから、アイクを解放してやる。
「なんなんだ、あんた・・・」
「悪かった。俺が馬鹿だった。アイク、すまん、このとおりだ!」
「なにやってんだ、あんた」
呆れたようにそっぽを向くアイクに、すぐさま床に額をこすり付ける。前述どおりみっともなく土下座をしてみせたスネークを、アイクは眉をしかめて見下ろした。
「そんなこと、しなくてもいい」
「そうは言うがアイク。俺はお前の気持ちも知らず、邪推してお前を傷つけてしまった」
「あんたはもう俺を疑ってないんだろう?」
「ああ」
「なら、もう、いい。土下座も弁明もいらん。俺はあんた以外のものになるつもりはないから、馬鹿なあんたがそれをわかったというなら、許す」
言って、アイクはまたふいとそっぽを向いた。よくよく見ると耳の先まで赤い。
アイクはこの部屋ダンボールの中で、スネークの危ない独り言を全部聞いていたのだ。そうしてガラにもなく照れて紅潮しているのだ。ああなんだこんちくしょう、なんでこんなに可愛いんだもう本当辛抱溜まらん。
つまり耐えかねたスネークは、もう一度アイクをぎゅうと抱きしめた。ぐえ、と蛙がつぶれるような声が上がったが気にしない。気の済むまま抱きしめたかったものなので。
ぎゅうぎゅう抱きしめていると、なんとか身じろいで呼吸を確保したアイクが対抗するように腕を回してきた。豪腕自慢の剣士にぎゅうぎゅう締められてスネークもムグ、と唸る。
色気のない抱擁のあと、無言で身を引き離したスネークはいそいそとアイクを引っ張って寝台に乗せる。
思い切り喧嘩をしたあとには仲直りのセックスをするものだ。
そんな理由をひっさげて、圧し掛かってキスしてやれば、まんざらでもない様子でアイクが応えてくる。
そう、これが恋人の鉄板なのである。
*
思いっきり舌を絡める濃厚なキスのあと、寝かせようと肩を押そうとしたそのとき、今の今まで従順にしていたアイクがやんわりとスネークの手を拒んだ。
まさかこのタイミングでおあずけなんて言い出すのでは、と思えばひやりとしてしまって、思わずアイクを睨みつける。が、青いつむじが揺れて、アイクらしからぬ弱々しい上目遣いで見返されてしまっては、うぐ、と息をのむしかない。こんなにしおらしいアイクは初めてなのだ。
ましてや、
「・・・優しくして、ほしい・・・」
なんて、そんな。
先ほどまでツンツンしていた様子を捨てて一変、不安げに、震える声で伝えるものだから。
スネークはまったく免疫のないアイクの弱弱しいデレに怯んでしまって、まじまじとアイクを凝視してしまう。
アイクはその遠慮のかけらもない視線に羞恥でもわいたのか耳まで赤くさせていたが、スネークはスネークで新鮮すぎるアイクのデレ期到来に頬に熱が上がるのを感じていた。
そんなにらしくない可愛さで優しくしてなんて言うものだから、スネークもありったけの優しさで触れてやりたくなってしまう。
それでなくとも、この前の強姦的な行為の分まで、優しくしてやりたかった。もともとスネークは苛めたいというより甘やかしてやりたい性分だ。
今度こそ大人しく横になったアイクに、軽いキスを繰り返し落としながら、手は慎重に衣服を剥いでいく。アイクに抵抗の意思はなく、素直にスネークの手に従って脱がされる。実はこんなに素直にアイクが脱がされるのも初めてのことだった。いつもなら脱がそうとした場合には軽い抵抗がある。羞恥なのか子供扱いとでも思っているのか、どちらにせよこうも素直ではない。または、自分からさっさと脱ぐのがアイクの常だった。その際の恥じらいは一切ない。いっそスネークが萎えるくらいの豪快なストリップだ。
つまりこんなに素直なアイクは一等珍しく、ますますもってらしくない。が、揺れる青目でスネークを窺うように見てくる様が可愛かったものだから、スネークに文句などありえるはずもなかった。
脱がしてみたアイクはいつもと大して変わらなかった。この前の行為ではまじまじと見なかったが、やつれたような感はない。ひとつき近く病気とやらで苦しんでいたにしては、見た目に変化がなさ過ぎる。また疑心が沸いたが、自分たちがフィギュアであることを考えて、普通とは違うんだろうと結論付けておいた。今は余計なことは考えずにアイクに集中したい。
アイクの上に覆いかぶさって首筋を舐め上げる。すぐ近くでビクリと顎が上がる。アイクの手がスネークの首に回って、気をよくしたスネークは片手でアイクの頭を撫でてやる。もう片方の手は、くすぐるように腿から脇腹を這い上げ、胸元へ。
「っ、っ・・・」
息を詰めてアイクが震える。回された手にぐっと力が入って、爪の立つ痛みが背中から伝わった。痛い、が、悪くない。アイクの感じている感覚が直に教えられているようで、スネークはこの些細な痛みがとても好きだった。ただし相手は豪腕が売りの剣士だもんで、無我夢中で力を込められてしまえば冗談抜きで死にそうになるが、それはそれ、これはこれ。喉仏、鎖骨、と舐めていき、鎖骨の下を強く吸い上げる。背中にはまた痛みが走る。アイクが感じている。
吸い上げたそこを舐めながら、左手はアイクの耳朶を擽り、胸元を揉み上げるように這わしていた右手で漸く小さな突起に触れた。
「ぁ、」
間近で聞こえるのは掠れた声だ。人差し指と中指でくに、と転がしてやれば、背中にまた爪が立てられる。スネークはにやりと笑いながら、押しつぶすように、摘み上げるように、丸く転がすように、執拗に弄ってやる。すぐに充血してぷくりと立ち上がる粒に満足して、今度は顔を胸元に持ってきてもう片方を舐め上げる。「くぅ、」、なんて子犬が鳴くような声を上げるアイクが愛おしい。感度が絶望的に悪かった男とは思えないくらい、アイクは敏感になっていた。乳首をいじられて鳴くようになるなんて、女のようだ。思いはするが、揶揄する気持ちはない。こうなるように仕込んだのはスネーク本人だ。実に可愛くなってくれて、満悦する。
片方を口に含み、もう片方を指で擦ると、アイクの脚がもじ、と身じろぐ。もどかしそうな仕草に、スネークは彼の下肢へと目をくれた。
そこは緩く立ち上がっていて、どうしようかと逡巡する。まだまだ胸を弄って焦らしてやりたい気持ちもある。ぴちゃ、とわざと音を立てて舌先で粒を揺らすように嬲れば、アイクはまんざらでもないような顔をして喘ぐのだから、このまま胸だけでイかすのもいいかもしれない。考えるだけで湧き上がる愉悦に、スネークは下卑た笑みを漏らす。が、アイクが何かを訴えるように蕩けた青目を向け、膝でスネークの胴を締めるように力を入れてくるものだから、仕方なくスネークは踏み止まった。優しくする、とも決めていたし。
窺うようなアイクの視線を宥めるように胸元を吸い上げて、空いていた片手をアイクの下肢に持っていく。触れた太腿が過敏に揺れる。
「んぅ、スネーク・・・」
膝頭を擽ってやればアイクが催促するような声を上げる。甘えた調子のアイクときたらどえらく可愛いもんで、スネークもそれ以上焦らす気にもならず、緩く立ち上がった中心にそっと手を持っていく。
「ふっ・・・、」
腰が揺れたアイクに笑いかける。
「優しくしてやるさ」
アイクの頬に朱が増した。
ああもう本当に、可愛い奴め。
*
丁重な手つきでアイクの中心を弄る最中、スネークはそれにぼんやり気付いていた。
アイクがじっと、窺うような目を向けてくるのだ。
スネークはその様子を時折見やりながらも、右手に握るアイクのものに意識を向ける。かり、と亀頭の窪みを引っかけば、露骨にアイクの腰が跳ねた。同時に、手のひらに熱を持った液体がかけられる。軽くイッたようだ。
それでも物欲しげにアイクのそこはひくりと揺れるので、スネークはうっすら嗤って身体を起こす。舐めてやろうじゃないか。
そう企んで、顔を近づけたときだ。
「・・・・・スネーク・・・」
「なんだ?」
小さく名を呼ばれた。これまたらしくない、弱弱しい声だ。アイクはこんなときでももっと強気だった。隙あらば上下逆転を企むほど。
それがまさか、そんなアイクが真っ赤な顔してまさか。恥じらいながらまさか。
「あ・・・、の、な・・・? 俺、が・・・する、から・・・」
そんな言葉を口にするなんて。
たどたどしい単語の羅列に、脳が付いていかない。夢にも見たことのない言葉がアイクの口から飛び出したものだから。
ぽかんとしているスネークの腕を、焦れたようにアイクが引っ張る。
「俺がアンタの・・・、」
「うぉっ!?」
「・・・これを舐めてやるって言っているっ・・・!」
言葉とともに握りこまれたのは男の中心、もっとも敏感な部分だ。
それを、なんだ、アイクは。舐めてやると言ったのか。言ったのか?いったのか!!?
脳のキャパシティを超過したスネークはかっちり固まってしまって、その間にも恥じらいが吹っ切れたアイクは「よっこいしょ」の色気のない掛け声と一緒にスネークを押し返し、もぞもぞ動いてスネークの足の間を位置取ってしまった。
新鮮な光景だった。
アイクは微妙な顔をして、じっとスネークの砲身を見つめている。顔が赤い。本当の本気でやるつもりなのだろうか。マグロが基本のアイクには、ちょっとばかり荷が重過ぎるんじゃなかろうか。
スネークは固まったままその様子を見つめる。そうしているうちに、アイクが一度ちらと視線を寄越した。目が合って、驚いたように一瞬肩を揺らしたアイクは、しかめっ面をしてゆっくりとそこに顔を近づけていく。
「っ」
息が詰まったのは、アイクの手が敏感な中心に触れたからだ。添えるようにそっと根元近くに触れて、それからすぐに亀頭に熱くて柔らかいものが触れた。
ひちゃ、と音が耳に響く。
(まさか、アイクが、本当に、舐めているのか・・・!?)
喉が鳴った。
自身の股の間で、目を伏せたアイクが確かに舌を出して懸命に奉仕しているのが見える。
現実を認識して、一気に全身の熱が上がった。アイクの舌技はとんでもなく拙いが、なにせ初めてのことで夢にも思わなかったことで、拙さなど気にならないほどの感動をスネークは感じていた。逆に下手なのがイイ。懸命さが健気っぽくて実にイイ。畜生、すごく、可愛い。
スネークが感動に「ううう」なんて呻いているのを、アイクはまたちらと上目で窺った。それから逡巡するように目を逸らして、瞼を下ろす。
「・・・んっ」
ふいに、奉仕をしていた手が一つ離れて、触れる舌が揺れた。
スネークが訝しく思い目をやれば、アイクは眉をぎゅっと寄せている。不自然に肩が下がっている。
黙っていれば、聞こえてきたのは奉仕の音だけではない。くちゅ、と控えめな水音。アイクの腰がかすかに揺れている。
「・・・そんな、まさか・・・」
あまりのことにスネークは絶句した。
まさか、そんな。
自主的な奉仕でさえ驚いていたというのにアイクときたら、スネークのものを舐めながら自分の下肢を、それも奥まった秘所を自身の指でほぐし始めたのだ。ありえない。
スネークはまた固まってしまって、とにかく淫靡すぎるアイクを凝視することしかできなかった。
「ふっ、ん、ぅん、んっ、」
スネークの先端を浅く食みながら、アイクは後ろを解している。くぷくぷ鳴っている音と、時折ひくりと跳ね上がる腰を見てそれがわかる。少し顰めた顔を赤く染めて、蕩けた視線をときどき寄越すのが憎いくらい、エロかった。鼻息も自然と荒くなるというもの。
こんなに滾るような気持ちは久々で、今すぐにでも押し倒して突っ込んでしまいたくなる。こんな希少な光景を無碍にするのは惜しいし、アイクは優しくしてと言っていたから、なんとか衝動を殺して耐えるけれども。
わずかな理性と戦いながらも、スネークは凝視した。目を眇め、二度と見られるかもわからないアイクの痴態を脳裏に焼き付ける。見れば見るほどアイクの姿態はエロチックだった。きりっと吊り上ることの多い眉目も一転、頬張るモノが苦しいのか八の字に眉を下げ、目は閉じられて瞼が弱弱しく震えている。頬には高ぶる熱から赤く染まり、スネークの男を銜える口の端からは唾液が垂れていた。ときおり濡れた舌を覗かせて、なまめかしく筋を辿るものだから、スネークは一つごくりと大きく唾を飲んだ。
少し視線をずらせば、華奢な腰の先で尻がゆるく揺れている。自らの指で開いているらしい奥の部分からは、くちゅくちゅ音が聞こえてきている。アイクの指が彼自身の先走りをぬめりに使っているのかもしれない。想像すると堪らなくなってしまって、やはり暴発しそうな本能を抑えるのに苦労した。腹筋に力を入れて、視界と下肢からダイレクトにくる快感を必死に耐える。優しくして欲しいなんて可愛いおねだりをふいにしないため、理性をどうにかかき集める。大人の余裕を保つというのは、思いのほか容易なことではないのだ。
それでもスネークは視線を外さない。そんなもったいない真似、言語道断である。目に力を入れて凝視を続ければ、アイクが閉じていた瞼を上げて、濡れた目を向けてきた。スネークはこの目が好きだった。ストイックなアイクの、普段の欠片も見せない欲情に濡れた目。青がしっとり濡れて濃くなっているその様は、アイクを乱れさせている事実を認識し、実に満たされるのだ。
そんな蕩けた目がすぐに不満そうに眇められた。直後、下肢が受けていた拙い快感が、鋭い痛みに切り替わる。
「い゛ッ!?」
急所に受けた痛みに声を上げれば、不満顔だったアイクがふんと小さく嗤った。歯を立てられたのだ。
どうやら凝視が気に障ったらしい。耳まで赤いのを見るに、ただ照れたのだろうとは判断がつくが、それでも男のもっとも敏感な箇所に与えられた痛覚は強烈で、カチンときたスネークは大人の余裕を脇において、少し乱暴にしてやろうかなと手を持ち上げた。
正直、つたない口淫による緩い刺激に焦らされてきたところだ。無理やりに頭を動かしてやろうかとサドッ気を出して頭に手を置いたところで、アイクの舌が、先ほど歯を立てた箇所をペロリと舐めた。
さすがに気が引けたのだろうか、その動きは詫びるかのように慎重だった。
ゲンキンなスネークはすぐにサドっ気が引いていくのを悟る。代わりに込みあがるのは愛おしさで、頭に置いた手はそのまま撫でるために使った。頭皮をくすぐるように掻いてやれば、アイクはまた目を閉じて、同じ箇所を舌先で慰めてくる。
その刺激に眉を寄せて、スネークは手をアイクの頬に滑らせて、顎を持ち上げる。ちゅぽ、と音をたてて硬くなったモノから口を離したアイクは、淫蕩な顔で首を傾げ、スネークを見返してくる。
無言で、アイクの腕を引っ張った。後ろを弄っていたほうの腕だ。指が抜けて、アイクの腰が一つ跳ねる。
身を起こしたスネークはアイクを引き寄せる。同時に、手を後ろに回してほぐされていたのだろう穴に遠慮もなく二本の指を突っ込んだ。
「あ、」
他人の指の感覚にアイクが声を上げてしがみつく。熱く溶けた肉壁の中を探りながら、ぐちゃぐちゃ音を立てて指をバラバラに動かす。度に、アイクは吐息と喘ぎの間のような小さな声を上げた。「あ、」と「は、」の音が掠れて漏れるのを聞きながら、スネークはもう十分に準備が整っていることを悟る。
「アイク」
「ひっ・・・」
耳元で息を吹き込むように呼びかければ、裏返った声を上げる。アイクは欲を込めた低い声を耳に吹き込まれるのに滅法弱い。仕込んだスネークとしてはアイクの反応は上々だった。
「入れたい」
「・・・・・・・・・・」
正直な気持ちをストレートに吹き込んだ。アイクは「は、」と一つ熱く息をついて、スネークの顔を見返す。
じ、と見詰め合って、直後、胸を強く押されてスネークは体勢を崩す。
「うお、」
思わず上げた声は、頭が枕に沈んだ音と混じって消えた。何が起きているのか、とっさに理解できなかったスネークは、腹を圧されてグ、と唸る。
何事か。
じろ、と目をやると、スネークの腰を跨いだアイクが、スネークの腹に手を置いて、腰を下ろそうとしている。
そんな、まさか。
今日だけで幾度目になるかもしれない驚嘆を呟いたと同時に、自身の先にひくつく蕾が触れる。
「・・・ん、」
眉をしかめたアイクが、苦しそうにしながらもゆっくり腰を下ろしていく。視界の先で腰が降りるのと同期して、下肢が熱い体内の肉感を伝えてくる。
「ん、んふっ、はっ・・・」
しどけなく口を開いて熱のこもった息を吐きながら、四肢に力を入れてゆっくり、ゆっくりとアイクは身を沈めていく。下から見上げるその光景は、凄絶だった。スネークは呆然と見ているだけだ。
股に尻たぶが付いたのをぼんやり悟った頃にも、スネークはまだ茫然自失の状態を抜け出せていなかった。ぽかんと口を開けた阿呆面を見下ろしたアイクは、何か面白かったのか、ふふりと笑って見せた。その顔は状況と相まって、えらく艶然としている。らしくもない顔に、ますますスネークの呆気は深まるばかりだ。
そうこうしているうちに、アイクはのそりと腰を揺らした。自重で奥深くまで銜えた肉棒が、体内をぐちゃりと掻いた。緩いながらもリアルな刺激に、アイクは驚いて小さく腰を浮かす。
「んんっ・・・!」
浮かせた分を戻せば、当然落ちる分だけ突き上げられる。刺激に震えて、四肢が引き攣る。張った腕の先で、拳をぐっと握りこんだ。
「うっ、」
スネークも同時に声を上げる。アイクが熱く締め上げてきたからだ。待ち望んでいた緊縮に、熱が集中していくのがわかる。
体内のモノが硬くなったのを感じたアイクは、少し戸惑いの滲んだ目を下になった男に向けた。一拍の間をおいて目を閉じると、また腰を動かし始める。
幼い頃、傭兵団の仲間に頼んで馬に乗せてもらったときのことをなんとなく思い出した。ぼやけた思考のまま、腰を前後に揺すってみる。跨っているのは蛇だが、要領は馬と同じだろう。そんなことを思いながら、マイペースに快感を追いかける。
「ん、あ、あ、はぁ・・・、あ・・・」
ぐぷ、ぬぷ、と体内から粘着質な水音が漏れる。肉壷をゆるやかにかき回され、アイクの思考はぐずぐずになって解けていく。急すぎない刺激に夢中になって、ゆさゆさと腰を揺らす。
淫靡な様を眺めながら、スネークの脳内もゆるやかに落ち着いていく。常にないアイクの奇行に驚かされてばかりだが、すぐに滅多とない機会を堪能する。熱く収縮する体内は、スネークにも確かな快感を与えてやまない。
しかしながらいかんせん、刺激があまりにも緩やかすぎる。アイクのペースで好きなように寄越されるものは、いっそ焦らしているのか勘繰ってしまいたくなるくらい緩慢だ。
は、と熱い息をついて、スネークはぐい、と腰を持ち上げた。
「うあっ!」
当然、自分のペースで動いていたアイクは驚いた。突然の突き上げは、奥深くを抉り、全身に電気が走ったかのように強い刺激をもたらす。
ビクビクッと肩を跳ねさせ、腕がピンと張り、背が仰け反る。達するかと思ったが、アイクのそこは身を跳ねさすのと同期して一つ大きく揺れただけだった。
硬直して快感を落ち着かせるのには、少しだけ時間がかかった。
「は・・・ぁ・・・」
ようやく震えながら息を吐いたアイクは、潤んで蕩けた目でスネークを見下ろした。当然、アイクの媚態を逃すまいとじっと見上げていたスネークとばっちり目が合う。
アイクが跨いで乗っかってから、目が合ったのはこれが初めてだった。
この瞬間のことだ。
なんというか、一気に滾った。
今の今まで、熱に溶けながらもなんとか一片だけ残っていた理性が、パチンと弾け飛んでしまったのだ。
頬に熱が上がり、頭の中が真っ白になる。生唾を一つ飲み込んで、スネークは無意識のうちにアイクの腰に手をかけて、思い切り突き上げた。
「あぁっ!?」
高く声を上げてアイクがまた仰け反った。ゴリ、と狙いをつけてイイ所を抉ったために、今度こそアイクは達して粘った液汁を飛ばす。それはスネークの腹について熱さを伝えてきたが、それよりもスネークの頭は熱で暴走してしまっていて、気にすることなく自身を何度も突き上げる。達したばかりの内壁は、痛いくらいに強く締め付けてくるのだ。それを無理やり押し広げるのがまた気持ちよくて、本能のまま腰を揺する。腰に添えていた片方の手を、熱を吐き出したばかりの中心に持っていって握りこめば、またギュッと収縮が強くなる。人差し指の先でカリ首のあたりをコリコリ弄ってやれば、ますます抱えた腰は跳ね上がる。
「ああぁっ、や、はげしっ・・・あふっあっあっあっ!」
先ほどまでの緩やかな刺激とは一転して激しくなった律動に、アイクは目を見開いてひっきりなしに声を上げる。抑えようなんて考えさえ起こらないほど容赦なく攻めているのだ。余裕のない嬌声に、自身も過ぎる快感に顔を歪めながら、スネークはにやりと口の端を持ち上げた。
ガンガン突くうちに、仰け反るアイクが置いていた手を浮かして、ふらりとそのまま後ろに倒れこみそうになる。慌ててスネークは身を起こして腕を伸ばした。背を押さえて、力いっぱい引き寄せる。グイ、と倒れてきた頭は肩で受け止めて、痛みに呻きながらアイクの腕を肩に回させる。ぜえはあと息を乱すアイクの背はせわしなく上下していた。宥めるようにぽんぽん叩いて、少しだけ呼吸が落ち着くのを待ってやる。
まだ出していない己の砲身は痛いほど疼いていたが、今ばかりは耐えた。優しくしてやるんだもんなあ、と忘れかけていた約束を思い出したスネークはうんうんと頷く。
回された腕がギュっと強くなった。埋められた首元あたりから汗のにおいとアイクのにおいが香って、やっぱり堪らなくなったスネークは無理やり肩からアイクを起こして、頬と顎を押さえて口付ける。性急に舌を突き入れてぐちゃぐちゃにかき回してやれば、背中に爪が立てられた。ガリ、と食い込んだ爪は文句なしに痛いが、集中すべきはアイクの口内に決まっているので、気にせず逃げる舌を絡めてじゅうと吸い上げる。唾液が垂れたのが手のひらに伝わり、ようやくスネークは口を離した。
「はぁっ・・・!・・・はっ、はぁ、」
せっかく呼吸を落ち着けていたアイクはまたぜえはあ言い出した。が、次は落ち着かせてやろうとも思わない。盛り上がってきたところで、そろそろスネークも熱を解放したかった。
「頑張ろうな」
「・・・?」
無責任な応援を耳に吹き込んで、アイクがくすぐったそうに身をよじったところでスネークは抱える身体の膝裏をさらって持ち上げた。
「ッくあああああっ!?」
突然の強い突き上げに、思わず喉を仰け反らせて声を上げる。熱いモノが、前立腺を掠めて奥深くまで抉り上げ、
頭の中が真っ白になった。スネークは頬から首筋にかけて舌を滑らせ、鎖骨付近を強く吸っている。鬱血の痕が残るが、アイクには気にする余裕がない。
太い上腕の筋肉を惜しみなく使いながら、スネークはまたアイクの身体を持ち上げる。決して軽くはないが、弾みをつければ実はたいして難しいものでもない。半分ほど抜いて、また一気に落とし込む。パン、と肌がぶつかる音とともに、粘液がはじける音がぷちゃっと鳴った。
それからはもう、理性をなくした男は解放に向かってただひたすら突き上げるだけだ。ガクンガクンとアイクの視界が上下に揺れる。快感に溶かされた思考のどこか隅のほうで、小さくなった理性が苛立たしげに舌を打つ。
ああ、だから激しくするなと言っているのに、何を聞いていたのだろう、この男。あれほど優しくしろと念を押したというのに。
忌々しく思うが、慣れてしまった身の上、蕩けきった体内をえぐられるのは素直に気持ちが良かった。また最奥を抉られて、残っていた理性はたやすく吹っ飛んだ。
それでも、激しくしてはいけないのだ。
ただそれだけを考えて、舌を噛みそうになりながら、アイクはなんとか言葉を紡ぐ。
「やめっ、や、スネーク、やさしくっ・・・!」
必死の訴えだった。だが、大人の余裕をなくして久しい男は、興が乗ったのか下種な具合にククと笑うだけだった。
「よく言う。物足りなそうにしていたじゃないか」
「んっく・・・!」
制止するアイクの言葉を鼻で笑って、スネークは強く腰を突き上げる。ぶつかり合った部分から、ぱちゅんと粘ついた水音が大きく鳴った。
「やだ、や、あっ、こわ、こわれぅっ、ああっ、んっ、ぅいッ、あっあっ!」
「ハッ、ハッ、アイク、アイクっ・・・!」
もうお互いに熱が上がりすぎてしまって、なにがなんだかわけがわからなくなって、パンパン鳴る感覚が次第に短くなっていって、頭の中を真っ白にしてしまった頃、スネークは腰をぶるりと震わしてアイクの中に熱い種子を注ぎこんだ。同時に、アイクもスネークの肩に思い切り爪を立てて二度目の精を解放する。
二人して震えながら、深く息をつきながら、しばらく解放の余韻に固まっていた。
ごぽ、とアイクの尻から零れた白濁が、密着した股に垂れたのを感じた頃合に、スネークはちらと目線を持ち上げた。脱力して再度肩に埋まったアイクの頭を眺めて、まだまだこれから続くであろう熱い交感を思い、思わずといったようににやにや笑ってしまう。
仲直りのセックスとは、得てして普段より数倍も熱く激しく燃えるものなのだ。
やに下がった顔のまま、スネークは感情に従ってキスしてやろうと手を持ち上げる。
ふいに、水滴が腹を打った。
粘ついた精液でもなければ熱のこもった汗でもない、ぬるくてさらっとした滴だった。室内にありながら雨でも降ったかと酩酊した頭で思ったが、一瞬後には馬鹿な考えを思い直し、スネークは眉を寄せてアイクを窺う。俯いた頬に涙の跡を見つけて、得心。
アイクの泣き顔は珍しいものでもない。普段は考えられないが、寝台の上で前後不覚になるほど責めてやればぼろぼろ零す。余裕のないぐしゃぐしゃの顔はスネークの嗜虐心を大いに満足させるものだ。
もっと堪能してやろうと頬に手を掛けかけたところで、スネークははたと気付く。
アイクの肩が、小刻みに震えている。
「っ・・・、ぅ、っ・・・・・」
聞こえるのは、小さな嗚咽。
中途半端な姿勢のまま、スネークは固まった。
さすがに気付くだろう。これは、普段とはどうも違う。熱がいきすぎて込み上げる涙ではない。
アイクの目から落ちているのだろう水滴は、ぽたぽたと止まることなく腹を打つ。スネークは急速に熱が冷めていくのを感じた。心臓がドクドクいい始める。手が引き攣れて、己の動揺をいやおうなしに悟らされる。
「・・・アイク・・・?」
戸惑いを乗せて呼びかけるが、返事はない。
中途半端な位置に浮かせた手をなんとか頭に乗せてやって、宥めるように撫でてみる。水滴は止まない。返事もない。
どうしていいのかわからなくなったスネークだが、これ以上仲直りのセックスが盛り上がることがないことは、さすがに理解することができた。