ひゃくせんれんま
「・・・、んっ、ふぅ・・・、はっ・・・・・・」
くてっと体を預けられ、ライはにやけそうになる頬を必死に引き締める。
青い髪がくすぐったいが、構わずライはその頭に頬を摺り寄せた。
愛おしい相手との、初めての営み。
ついでにアイクの「ハジメテ」もいただいてしまったワケで。
やはり押さえきれずに頬がにへらと緩むが、その後に続いたアイクの衝撃の一言に、思考は完全にフリーズする。

「・・・・・よかった、が。やっぱりあんたのより、モゥディのがおおきくてイイな」


(´∀`)?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、、、、、



!!!!!!?



な、な、なんですとっ、アイクさんんんんんん!??


「なっ、な、な、NA、なっん、なんどぅっ、っ、っっ!?」
「落ち着け、ライ」
顔をしかめてアイクが言うが、無論そんなもの、ライの耳に入ろうはずがない。
必死を通り越して瀕死めいた鬼気迫る表情がアイクに迫る。
「も、モゥディって!? いや、ちょい、マッテッ、モゥディってのは、あの、?」
「? モゥディはモゥディだろう? あのもそのも関係ない」
天然団長は、自分の言ったことがどれだけ衝撃的であるのか、理解しえていない。
勿論、ライの心の中では立て続けにビックバンが発生していることなど、知りようはずもないわけで。
「モゥディのはとにかく大きくてな・・・。まさかあれが入るとは俺も実際にやってみるまでは信じ切れなかったな(笑)」
「か、(笑)じゃないデスヨ、アイクさん・・・!」
「まあ、今までのケイケンが役に立ったんだろうな。慣れてなきゃ血が出てたところだったぞ」
めったに見せない笑顔で語るその内容は、決してその笑顔ほど朗らかなものじゃない。
いやまてまてまて、それよりもまたなにやら聞き捨てならない単語があったじゃないか。
「・・・・・・・・・・・・今までの、ケイケン・・・・・・・?」
「ん? ああ、モゥディのは今まで抱かれてきた中でも一番大きくてな」
「いやそうじゃなくてだな。抱かれてきたって・・・・、」
「言ってなかったか? 俺は“百戦錬磨”だぞ?」
まさかまさか誰が思うものか。
こんな朴念仁で天然で性欲の欠片もないような顔をして赤ん坊はキャベツから這い出してくるんだろう? と言い出してもおかしくないようなこの男が!
まさか本当に百戦錬磨のツワモノだなどと!!
ど、どうりで。
どうりで、「なんか手馴れてるなー」とか、最中に思ったり思わなかったりしたわけだ。
なんたって相手は自称百戦錬磨。
男の相手なんか、格下の敵を斬り捨てるのよりもたやすいことだろう。
泣けてきた。なにが、“ハジメテをいただいた”、だ。
ライはがっくりと項垂れる。彼はこう見えてデリケートで、なかなかにピュアなのだ。
「・・・俺が好きなアイクは、こんな手馴れたあばずれじゃないんだ・・・!」
「あばずれとは心外な。心はずっと処女のままだぞ?」
「どこがだ・・・!!」
第一“処女”なんて口に出す時点でお前はすでに処女じゃない!!!!!
今にも壁に頭を打ち付けそうなライの様子を見て、アイクは少しだけ考えた後、すっとライの首に腕を回す。
急激に近づいた距離。吐息が掛かりそうなほど間近。あと3センチでも動けば唇が触れ合う。
思わず息を呑んだライに、アイクがクスリ、と笑ってみせる。(違う、こんなアイク俺の知っているアイクじゃないーーーーー!/ライ心の叫び)
「まあ落ち着け、ライ。あんただって、よかっただろ?」
普段の無愛想な仏頂面からは想像できようはずもない、まさに妖艶としか言いようのない顔で、アイクは赤い舌を覗かせた。
それはそれはもう、あんまりに艶やかで、急速に下半身に熱が集まっていく。
絶望に、顔から血の気が引いていった。
「いや、本気で、お前、誰?」
「アイクだ。あんたの好きな」
違う、俺が好きなのは―――、
「そして俺も、あんたが好き、だ」
思わず、思考が停止した。
青い瞳が淫蕩に細められる。
いつくしむ目、視線に愛でられている。


「愛してる、ライ」


唇が重ねられる、舌が差し込まれる、激しく求められる。
ああ、もう。
流される。


百戦錬磨を前にしては、100年以上も生きた獣牙の戦士でさえも、その淫らさに逆らうことなどできなかったのです。
1.・・・拾っちゃった
デインの狂王は、実に気まぐれな人物だ。漆黒の騎士はそう記憶している。
自らの仕える者のために、漆黒の騎士はアシュナードを主と呼び従事しているが、たまに、狂王は本当に馬鹿なんじゃないかと思うことがある。
彼は気まぐれに、奇天烈で厄介な行動を起こすのだ。
たとえば、突拍子もなくフラリと城から姿を消し、フラリと夕刻に帰ってきたそのときのこと。
やたらと大きな荷物を抱えて、上機嫌にアシュナードはその“手土産”を見せ付けてきた。
「くっく。どうだ、漆黒の騎士」
「・・・・・・・・・・」
絶句、とはこのことを言うのだろう。
漆黒の騎士は、黒い冑の下で、それはそれは珍しくも間抜けに呆けた顔をしてしまったのだ。
アシュナードが得意気に見せてきたその“手土産”は、漆黒の騎士もよく見知ったモノだった。
「・・・・・王、これは」
「拾ったのだ」
今度こそ漆黒の騎士は、口をぽかんと開けたまま、完全に黙してしまった。
この男は、本当に、何を考えている?
馬鹿じゃないか、とは漆黒の騎士が切実に思ったことだ。口に出すことはないものの。
狂王の肩に荷物よろしく抱えられているのは、ただの手土産にしては大きすぎる代物。
青い髪に深緑のバンダナ、格好はいつか月夜の下で見た一傭兵の装備ではなく、随分とご立派な将軍仕様だったが。
誰が見間違えようか。
今現在デインに敵対しているクリミア軍の総大将であり、漆黒の騎士においても並々ならぬ因縁のある相手。
まだ少年らしさの抜け切れぬ顔で瞼を伏せているのは、他に誰あろうアイクその人だった。
気絶しているらしいアイクの顔を見やって、漆黒の騎士はなんとか口を開く。
「王。これが誰だか無論わかっているんでしょうね?」
「さて。気まぐれに拾ったものだから検討もつかぬ」
くっくっといつにも増して人を馬鹿にしたような笑い声に、漆黒の騎士は思わずエタルド片手に月光を叩き込んでやりたくなった。
さすがにそれは、鉄壁の自制心でなんとか押さえるのだが。
明らかにこの拾い物の正体を知っているくせに、アシュナードはにやにや笑って漆黒の騎士を視線で促している。
あからさまな視線に、漆黒の騎士は溜め息とともに苦々しく吐き出した。
「・・・クリミア軍の総大将、アイク」
「なんと! それはとんだ拾い物をしてしまったな」
白々しい。
第一、小さな犬猫ならともかく、こんな大きな、しかもベオクを拾い物扱いなど。
アシュナードの狂王ぶりは今日も尚健在なようだ。
「とにかく、これを我の部屋に運ぶ」
「どうなさるおつもりです?」
「決まっておろう。拾ったのだから、飼う」
その言葉が冗談なのか本気なのか、それを判断することは出来そうもなかった。
ただこの男は、どれだけ冗談めいた言葉であろうと、本気で実行する傾向がある。
思わず漆黒の騎士は、額に手を当て項垂れると、



「返してきなさい」



本心からの言葉を、押し出すように呟いた。



拾い愛10のお題。配布元:創作者さんに50未満のお題
3.いっしょにごはん
「折角飼うのだから、お前の好きなモノを出してやろう。好物は?」
「肉」
即答に苦笑するでもなく、アシュナードは満足そうにクツクツと喉を鳴らし、すぐさま料理長に言いつけた。


今後一週間、朝昼晩と肉のフルコースを出すように。


顔をパッと輝かせたアイクに、漆黒の騎士は眉根を寄せる。
「王、朝昼晩は極端すぎる」
「そうか?」
相変わらず、人の癪に障るような顔をして、アシュナードは漆黒の騎士を笑う。
その瞳の中にからかいの色を見つけ、漆黒の騎士は思わず脱力した。
遊ばれているという自覚はある。だが、ここでアシュナードの退屈しのぎから席をはずすような真似は許されていないのだ。
「いくらなんでも、毎食肉では好物とて飽きがきます」
「俺は飽きんがな」
「・・・栄養も偏りすぎて体調を崩す可能性も、」
「ないぞ」
いちいち口をはさむアイクを見下ろして、一言。
「太るぞ」
「その分体を動かせばいいだけだ。あんた、案外口煩いんだな」
「我もそう思う」
アイクの呆れた口調に、アシュナードまで追い討ちをかける始末。
ヒクリ、と漆黒の騎士は冑の下で思いきり頬を引き攣らせた。
何故この阿呆共は敵同士であるというのに、息を合わせて私を馬鹿にしてくるのだろう。
緊張感の欠片も感じられぬ二人に、漆黒の騎士は途方もないやるせなさを感じた。
らしくもなく「帰りたい」と心の中で呟くほど、彼は精神的に疲弊させられていたのだ・・・。



その晩。
無駄に広いテーブルに並べられた肉料理のフルコースを前に、漆黒の騎士は何をするでもなく座っていた。
テーブルを隔てた向かいでは、アイクが嬉々として肉を頬張っている。
その様を上座から面白そうに眺めながら、アシュナードはくつくつ陰気に笑っている。
いまいち明るさとは程遠い室内の雰囲気とあいまって、妙に気味が悪い光景だ。
会話らしい会話もない不気味なこの空間に、何故自分は組み込まれているのだろう。
見るからに美味そうな料理を前にして空腹を訴える腹と、目の前で実に美味そうに肉を頬張っているアイクと、それでも冑を外して顔を晒すことの出来ない苛立ちと、漆黒の騎士の煩悶を愉快気にニヤニヤした目で見てくるアシュナードと。
理不尽な嫌がらせに、漆黒の騎士は無意識に呟く。
「・・・帰りたい・・」
無論、その切望が叶うことなどあるわけがなかった。



拾い愛10のお題。配布元:創作者さんに50未満のお題
団長様は見せ付ける羞恥プレイがお好き
「アイク将軍、おられますか?」
天幕の外から声をかけられ、ボーレは思わず息をのんだ。
彼の上に乗るアイクは、少しも動じる様子もなく平淡とした表情で声のかかった方向を見つめていた。
アイクが、ニヤリと笑う。
反射的に、ぞっと嫌な予感がボーレの全身を支配する。
「・・・なあ、見せつけてやろうか?」
「・・・・・聞くのが怖いんだが、何を?」
「俺たちを」
「馬鹿だろ、お前」
心の底から呟く。
「馬鹿とはなんだ。なに、究極の羞恥プレイと思えばいいじゃないか」
「それ明らかに俺にたいする羞恥プレイだよな、そうなんだな!?」
普通逆じゃねぇの!? なんて小声で叫ぶ。
人の上に乗っかって、人のモノを銜え込んだまま、この男は何を言い出すのだろうか!
「俺も少しは恥ずかしいぞ?」
「お前ホントなんなの?」
いっそ泣いてしまいたい。なんでこの男、性に関することとなるとここまで気がトチ狂ってしまうのだろうか。
第一、こんな男同士でしかも軍を率いる将軍の行為を見せつけられたりなんかしたら、相手のほうが気の毒だ。
下手をすれば一生モノのトラウマになる。
見られるボーレとアイク以上に。
ボーレは己の上で妖艶(なんだこの表現は)に微笑むアイクを睨みつけると、押し殺した声で言った。
「・・・絶対、ヤ メ ロ」
「そんなにイヤか?」
「当たり前だろうが」
「そうか・・・。それは、しょうがないな」
本気でつまらなそうに溜息をこぼしたアイクに、ボーレはうすら寒いものを感じた。