| ※パラレル注意 |
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| 1.ソラから降ってきた |
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空の上から降ってきたそれは、果たして僥倖か、はたまた不運だったのか。 いや間違いなく不運だろう、とか自分でツッコミいれたけど。 普通に歩いていたオレの上から降ってきた、普通じゃないモノ。 誰が予期できたものだろうか、自分の頭上から人が降ってくるなんて。(天気予報ですらそんなことは言ってなかった) しかも、だ。 落ちてきたそいつは、あろうことかオレを踏み台にして、地面に着地しやがったのだ。 踏んづけられた衝撃でオレは倒れ、再び目を開けてみれば、目の前には仏頂面した男が一人。 しかもオレを踏み台にした輩だ。 そこで一発殴るべきだった。が、オレが先手を打つ前に奴が言った言葉で、オレの思考はフリーズすることになる。 「唐突で悪いが、俺は魔女だ。折り入ってあんたに頼みがある」 「・・・・・・・・・・はあ?」 誰が即座に反応できようものか。 そいつは自分のことを魔女だと言い張るのだ。男であるにも関わらず。 それ以前に突っ込みどころが多数ありすぎて、言葉にもならない。 つーか。 「てめぇ誰だよ」 「だから魔女だ。見てわかるだろ?」 「どこが」 見て分かるどころか、喋っていることの意味すらわからん。 本来ならこんなアブナイ人とはお関わり合いにならずに立ち去るべきなんだろうが。 オレは思わず呟いていた。 「ってか、オレにどうしろと?」 「別にあんたにどうこうしろとは言ってないさ。魔女には17歳で旅に出るしきたりがある」 「・・・で?」 「見知らぬ街にやってきたはいいが、文無し宿無しの状態でな。とりあえず俺を養ってくれ」 「てめえ、それが人にモノを頼む態度かよ・・・」 脱力して項垂れれば、目の前の自称魔女は偉そうに腕組をしたままで、オレに蒼い瞳を向けてくる。 オレが一体何に脱力しているのかも分からぬ素振りで、胡乱げに眉を寄せた様を見ると、殴りたくさえなった。 いや、先程の踏み台沙汰を考えれば、まだ一発も殴っていないことがおかしいのだ。 思い出すとまた腹立ちがよみがえってきて、とりあえず文句でも言おうかと口を開いた矢先。 またしても行動は中断され、オレはうっと口を詰まらせた。 「・・・・・頼む、他に頼れる奴がいないんだ。あんたに断られたら、俺は・・・」 捨てられた子犬のような目を向けられて、オレは顔をしかめた。 男がそんな顔をしたってキショいだけだ。揺らいでなるものか、決して。 こんな怪しさ満開な男を、養ってなどやるものか、決して。 「必ず、役に立つから」 だから、と続ける哀願の瞳は、言葉よりも雄弁にオレに訴えかけてくる。 ますます眉間の皺が深くなる。 冗談じゃねぇ、なんでオレが、つーかキショいんだよ、とか。様々な言葉が頭のうちをぐるぐると回る。 言ってやればいいのに、言葉が喉に突っかかって出てこない。 だから、その目をやめろってんだ。 ああ、畜生。 早足で歩きながら、オレは自分の情けなさにイライラしていた。 オレから半歩下がった後ろには、しっかりとオレの後を付いてくる魔女男。 結局、絆されてしまった・・・。 不機嫌極まって乱暴に頭を掻く。そんなオレの様子に気付いているのか気にしていないのか(絶対後者だろ)、オレの不機嫌のもとたるソイツは暢気に声をかけてきた。 「ところであんたの名前はなんていうんだ?」 「人に名前聞くときゃ自分からまず名乗れ」 「そうか。俺はアイク。で、あんたの名前は?」 「・・・・・シノン」 「シノンか。これからよろしく頼む、シノン」 声に含まれた、少しだけ(本当にごく僅かだが)嬉しそうな気配を感じ取って、オレはまた顔をしかめる。 んな似合わない嬉しそうな声を出すから、ますます追っ払えないじゃねぇか・・・。 | 2.黒のマントのすそ |
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「・・・怒鳴りたいところは多々あるが、とりあえず、なんのつもりだ?」 「・・・変か?」 「明らかだろうが」 すげなく言ってやれば、アイクは多少不満そうに自分の姿を見下ろした。 そうやって見直してみろ、てめえがどれだけ頓珍漢な格好してるかってのを。 沈黙の中で、アイクが自分自身の格好を見直して数刻。 顔を上げた奴は、不可解そうに眉を寄せて言いやがった。 「・・・どこが変だ?」 「・・・・・てめえの頭ん中」 天然丸出しの答えに、オレは溜め息と共に吐き捨てる。 だってそうだろう、男のくせに黒いワンピース(?)を着てるだなんて。 趣味なのかなんのかは知らんが、んなマニアックな変態趣味をオレに見せられても困る。 そう言ってやれば、アイクは心底不思議そうに呟く。 「だがこれは魔女の正装だぞ?せっかくなんでシノンに見せてやろうと思って着てみたんだが」 「着んな、見せんな」 オレの精神衛生のためにも、そんなご好意はお断りだ。 誰が男の女装なんぞ見て喜ぶか。(しかもどこからどう見ても男にしか見えない男の、だ) 思わず呆れた溜め息が漏れる。本日二度目の溜め息だ。 オレの幸せは、一日数回以上はしている溜め息と共に、かなりの量が放出されている。 この天然自称魔女男が来てからの溜め息数といったら、カウントするのも億劫なほどだ。 ふと、そこで。 目に入ったものに眉を寄せて、チョイチョイとアイクを手招きする。 「ちょっと来い」 「なんだ?」 アイクが近寄ってくる。 完全に奴が間近に立ったところで、その真っ黒なスカートの裾を掴んで、そのままひらりとめくりあげた。 「・・・・・なにをするんだ、破廉恥ポニー」 「なっ、てめえ、変なあだ名つけてんじゃねぇよ!」 「あんたこそいきなり人の服をめくり上げるなんざ破廉恥だぞ」 「うるせぇ! てかスカートの下がジャージっつー中途半端さがありえねぇ!」 そう、魔女っ子の正装で通すならスカートの下にジャージなんか着用するものじゃない。 パンチラ時に対応できるかぼちゃパンツでなければダメなのだ。 「どーせやるならとことんやりやがれ!」 「男がパンチラ見せてどうするんだ。・・・まさかあんた、そういう趣味なのか!?」 「だあああああ、変な勘違いしてんじゃねぇ!! 変態趣味はてめえだろうが!!」 なんて不毛な言い争いだ! ついでにそんな不毛な言い争いですらも悪くないとか思ってるオレ自身も、不毛すぎる! | 3.空飛ぶほうきとネコのしっぽ |
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「おい」 「なんだ」 「お前って、空飛べねぇの?」 だって、仮にも魔女(男であるとはいえ)なんだから、空くらい飛べたっておかしくないじゃないか。 例えば、ホウキに跨って空を飛ぶ、とか。 90%の冗談と、10%の期待を胸に、聞いてみる。 アイクはしばらく考えてから、答えた。 「飛べんな」 「・・・・・お前、ホントに魔女か?」 「ああ、魔女だ。なに、魔女は空を飛ばなきゃならんわけでもないさ」 「魔法のホウキは?」 「あまり夢を見るもんじゃないぞ、シノン。あんたの頭がどこかに飛んでいってるみたいだな」 可愛さあまって憎さ百倍なことを言うもんだ。 とりあえず腹が立ったから一発ぶん殴る、と。 「痛い、シノン」 「うるせぇ」 ったく、こんな魔女がいてもいいのかよ。 世の中の夢見るお子様たちが泣くぞ。それどころか夢を打ち壊されて現実主義者になる可能性が濃厚だ。 ああ、世も末だな。 「まあ、百歩譲って飛べなくても許してやる。で、お前、猫は?」 「・・・あんたの中の魔女のイメージが何に基づいて作られているのかがわからん」 アイクは不可解そうに眉を顰めながら、猫か・・・、と呟いた。 答えを待つことしばし。 複雑な表情で、アイクは言った。 「猫、な。いるにはいるんだが・・・。実家のほうに置いてきた」 「あ? 実家?」 「ああ。あいつはちょっと俺に懐きすぎてるし、猫としても大きすぎるからな。黒くもないし・・・」 「・・・意味わかんねぇ」 懐きすぎて大きすぎる? イメージがまるで掴めない。でも黒猫じゃないのは致命的。 「一緒に旅をするにもなにかとめんどうだから置いてきたんだ。魔女の旅に別段猫は必要ないからな」 「・・・お前ホントに魔女かよ?」 「俺は紛れもなく魔女だぞ?」 言い切るのはいいが、だったらもっと魔女らしくなれ、と叫んでやりたい。 そんな気力もないから、ただ脱力しただけだったが。 「なんだシノン。今流行の鬱病ってやつか?」 「・・・てめぇのせいでな」 本気で、魔女に夢を持つ全世界の子供たちが泣くぞ、コレは。 | 4.おつかい使い魔 |
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時計を見れば、現時刻ちょうど昼時。 そういえば腹も減ったな、なんて自覚したとたんに、空腹で不愉快になってくる。 人間、腹が減ってるときは機嫌が悪くなるというものだ。 顔をしかめながら、けれど自分で動くのはかったるい。 「おい、アイク」 「なんだ?」 「腹、減んねぇか?」 「・・・そうだな、もう昼か。シノン、昼飯は肉がいい」 「三食毎にそれ言うのやめろ。でもって今日はてめえが飯を作れ」 「あんた、俺に料理をしろというのか。生まれてこのかたフライパンなんて物騒な物を持ったことがないこの俺に!」 「なんでもいいからさっさと飯用意しやがれ!」 空腹に押されて叫べば、アイクは面倒くさそうに立ち上がる。 「仕方ないな・・・、使い魔を呼ぶか」 「使い魔?」 初めて聞く耳慣れない単語に、思わず興味を引かれてしまった。 今まで魔女らしいコトを何一つしなかったこいつが、初めてそれらしいことをしようというのだ! 一体何をしようというのか、召喚の儀式か?儀式の準備か? 好奇心に促されるままにオレが注目する中、アイクは徐に立ち上がった。 そのまま歩いて電話へと近づいていき、暗記してあるのか、よどみない動きで番号を呼び出し、 「・・・・・ああ、もしもし。出前を頼みたいんだが」 「出前かよっ!!」 思わず叫んでつっこめば(自分でも賞賛したくなるような見事なツッコミだった)、アイクはうるさそうに眉を顰め、人差し指を立てて黙るよう訴えてくる。 ああ確かに電話のときに叫ぶのは迷惑だろうよ。 でもてめえにわかるかこの裏切られたかのような果てしない落胆と失意の気持ちが!! 「ラーメンと、あとチャーシューを肉大盛りで」 図々しい注文だ。 「住所? シノンの家だ。場所は―――・・・、」 そうして一連のやり取りを終えると、アイクは満足そうに受話器を置いて、 「よし」 「よしじゃねぇよ!!」 頷いたのに間髪いれず怒鳴った。 「てめえ使い魔はどうした使い魔は!!」 「ちゃんと頼んだものを今から持ってくるぞ?」 「あれは出前って言うんだ!」 「残念だったな、シノン。俺の実家では出前のことを使い魔と呼ぶんだ」 知ったことか!! 「ちなみに俺は肉の次にチャーシュー麺が好物なんだ」 だから知ったことかと!!! あまりのボケの連続に、不覚にも無駄に疲れて項垂れる。 少し自分を落ち着けて、確認するように唸った。 「って、金はどうすんだよ?」 「何度も言わせるな、シノン。俺は文無しだ」 「つまるところ、オレに払えって言いたいんだな、糞餓鬼が・・・!」 いいだろうよ金は払ってやるよ、そのかわりてめぇのチャーシューは全部オレが喰らってやる! 轟々と燃える決意を胸に、オレはラーメンが届くのを財布片手に待ち望んだ。 | 5.幸せの魔法をアナタに |
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「気が付けばもう一年か。早いな」 「あぁ? なにが一年だって?」 唐突に口を開いたかと思えば、意味の分からないことを言う。 そんなアイクのペースにも、不本意だが慣れてしまっている自分が恐ろしい。 「俺があんたと出会ってから、一年だ」 言われてみればそうだ。 この一年、我ながらよくもまあ追い出すこともなくやってきたもんだ。 「そろそろ・・・、家に帰ってみようと思う」 「・・・は?」 アイクが呟いたのを、真面目に聞いてなかったせいか、思わず聞き返してしまった。 「実家に帰ろうとかと思ってな」 帰る? ああ、そう。そりゃ結構なことだ。 「・・・はっ、ありがてぇこった。やっとてめえから解放されんのか」 「・・・・・」 黙って俯くアイクが、何を考えているのかなんか、知ったこっちゃない。 何を考えていようと、どうせもうこいつは出て行くのだ。 気にしたところで、意味なんかないだろう? 「ま、出てくんだったらさっさと荷物まとめて行っちまえ。邪魔はしねぇからよ」 「・・・あんたは、それでいいのか?」 「あぁ?」 意味が分からない。 「俺が帰ってもいいのか?」 「・・・・・さっきからそう言ってるだろーが」 なにが言いたいんだよ、てめえは。 「このまま俺が戻ってこなくてもいいのか?」 「そのほうが清々すんぜ」 誰がこんな中途半端な魔女と一緒に暮らしたいと思うかよ。 オレは目を閉じたまま言う。 目を開ければ、見たくもないものが見えるだろうから。 アイクの顔が、想像出来てしまうから。 それを見たら、自分がありえもしない行動に出てしまいそうで嫌だから。 『・・・・・・・・・・』 部屋が静寂で包まれる。 向こうが喋らないから、当然オレも喋らない。痛いほどの沈黙が、なんとなく重かった。 その間もオレは、絶対に目を開けないように、耐え続ける。 けれど、 「俺は・・・、」 アイクが、 「シノンがいないと、」 そんな似合わないことを、 「寂しい、と、思う」 言うものだから。 ずっと閉じ続けていた目を開く。 テーブルを挟んだ向かい側に座るアイクは、予想通り、いつもの仏頂面に、寂しさと悲しさを織り交ぜた顔をしていて。 似合わない、さっきの言葉も、その顔も。 お前は、いつもみたいに、ふてぶてしい顔をして、むかつくことを言っていれば、それでいいのだ。 「・・・・・お前、バッカじゃねぇの?」 「シノンが馬鹿だ」 「あぁ?」 「・・・帰る。世話になったな」 そう言ってアイクは立ち上がる。 不貞腐れた態度がまるで子供だ。なんとなく滑稽で、オレは思わず笑った。 ったく、しょうがねぇな。 オレは薄く笑いながら立ち上がった。そのまま、本気で身支度を整え始めているアイクに近づく。 アイクのすぐ後ろでその様子を見ていれば、気になったのか、蒼い頭が振り向いた。 瞬間、 狙って、掠めるような口付けをしてやった。一瞬だけ互いの唇が触れる。 そうして顔を離して、アイクの顔を覗き込めば、珍しく真っ赤な顔で目を見開いている。 手で口元を押さえながら、呟かれた言葉は、 「・・・なにをするんだ、破廉恥ポニー・・・っ」 よりにもよってそれかよ・・・。 色気もなにもあったもんじゃねぇ。こいつにそんなもんがあったらあったで寒いけど。 オレはなんとか絶対にツッこむまいと、必死に自制を働かせる。 この際、頬が引き攣ってしまうのは仕方がないこととする。 「嫌だったか?」 「・・・・・」 尋ねれば、アイクが俯く。 そっちが始めたゲームだ、黙って逃げるのは許さねぇよ。 「お前、オレのこと好きだろ」 「っ・・・、」 「黙ってんじゃねぇよ。イエスかノーの二択だ、単純だろ?」 「シノン・・・」 オレはあまり気が長いほうじゃない。それはてめえも重々承知してるはずだ。 アイクは少しだけ黙ってから、オレの顔を窺うようにして見上げ、小さく頷いた。 「――好きだ」 予想通りの答えに、オレはニヤリと笑う。 そのまま腕を伸ばして、中途半端に出来上がっていた荷物を押し退けた。 「シノン?」 「帰り支度なんかしてんじゃねぇよ」 「でもあんたがさっさと出てけと言ったんだぞ?」 「うるせぇ。オレがいいっつってんだからいいだろうが。それとも、てめぇはオレと離れたいのか?」 オレが不機嫌を滲ませて言えば、アイクはもはや開き直ったのか、首を振って否定する。 「じゃあいいじゃねぇか。お前はオレと一緒にここで暮らしてりゃいいんだよ」 「・・・・・いいのか?」 不安げに聞いてくるアイクに、なんとなくもう一度口付けてやる。 さっきよりも数秒長く。 触れるだけのキスだったが、この天然魔女男には十分だろう。 顔を離せばやはり慣れないのか、固まっているアイクの耳元に囁いてやる。 「オレも、お前が好きだ」 「っ・・・!」 言われた内容を理解したのか、アイクがますます硬直する。 くっそ、可愛いじゃねーか。・・・とか思ってる自分が痛い。 けどま、もうどうでもいいか。 顔だけは不本意そうにしながら、オレはアイクを抱きしめた。 ああまったく、こんなこっ恥ずかしい真似、いつものオレなら絶対しないね。 それもこれも全部、この厄介な魔女男のせい、だ。 言い訳のように、呟いた。 |
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結局のところ。 オレたちはなにも変わることなく、続けていつもの日常を過ごしているワケで。 ただ前と変わったといえば、少しだけ関係に変化があっただけ。 「そういえばお前、結局魔女らしいこと何一つ見せてねぇよな」 ふと思い浮かんだ疑問を口にした。 最近では、アイクが魔女だということ自体、忘れたりもしている。 少しは魔女らしいところを見せてみろってんだ。 「・・・魔法なら使ったぞ?」 「あぁ? いつだよ?」 そんな話一度も聞いてねぇぞ? どうせならオレが見てるところで魔法なりなんなり使いやがれ。 「シノンに使ったんだ」 「はあ?」 「あんた、今、幸せか?」 急に関係のないことを聞いてきたアイクに、オレは思いっきり眉を寄せる。 そんな話、魔法になんの関係があるんだよ。 とは思いつつも答えてやるあたり、オレも大概コイツに甘い。 「・・・・・まあ、前よかは幸せ、だけどな・・・」 「・・・そうか」 自分で聞いといて、アイクはオレの答えに少しだけ赤面している。顔はどこか嬉しそうだし。 それにつられて、なんとなくオレも赤面。(実にイタイタしい光景である、なんてことはもはや気にしちゃいらんねーんだよ) 慌ててオレは口を開く。 「・・・って、それが魔法となんの関係があんだよ?」 「わからないか?」 「全然」 降参とばかりに肩をすくめれば、アイクは珍しく小さく笑った。 「シアワセの魔法、だ。あんたを幸せにするための魔法」 「・・・・・」 よくもまあ、そんな恥ずかしいことを言うもんだ。 とは思いつつも、衝動的にオレはアイクを引き寄せて、キスを一つ。 初対面で空から降ってきたこの魔女男は、 どうやら当初の見解とは逆に、オレにとっての僥倖だったようだ。 |