| 5.理性 |
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こもる熱に、互いの荒い息、そして、押し殺された声。 「っん、・・・ぅ・・・、」 「・・・もっと声、出せよ」 「無茶、言うな・・・。それでなくとも、あまりいいとは思えんのに・・・っ」 思わずカチン、ときた。 本人にそのつもりはないにせよ、遠まわしに、「お前じゃ満足できん」と言われたような、「下手だ」と面と向かって言われたような、そんな気持ちだ。 あまつさえ、 「どうした? 終わりか? もう寝てもいいのか?」 なんて可愛くないを通り越して、やたらと神経を逆なでする憎たらしいことまで言う始末。 情事の雰囲気をもっと大切にしてくれ、とはいつも言っているが、それが聞き入れられたことはない。というより、彼にしてみればなんだそれは? の世界であって、言葉の意味からしてまず通じていないのが悲しいところだ。 そんな空気の読めない恋人は、その見かけと同じで感度も実に男らしい。要するに、まあぶっちゃけ、感度はあまりよろしくないわけで。 思い通じて初めて行為にいたってから今まで、少しは顔を赤らめるものの、あからさまな反応を見せたことがないのだ。 そうして、思いっきり眉間に皺を寄せた顔で一言。 「さっさと終わらせてくれ」 と、言うのである。 普段は気の長いほうである自分が、プツリとキレてしまっても、まあしょうがないだろう、とライは思うのだ。 それでもたいがい恋人に甘いライは、性欲が極端に薄いこの男がセックスをさせてくれるだけでも有り難いわけで、あまり無理強いなど出来る立場ではない。 それに今のままでも、少しとはいえ確かに反応を返してくれる体とか、赤く染まった目元とか、僅かに快楽に歪む顔とか、掠れた吐息とか、締め付けてくる生々しい肉の感触とか、そういうのはすごいそそるし気持ちいいし、満足している。 でもでも、それでもだ。 この無愛想な顔をもっとぐしゃぐしゃになるまで苦痛と快楽に歪ませて泣かせたい。 激情のままに突き上げて、あんあん鳴かせて叫ばせて許しを請わせたい。 理性をどろどろに溶かしてやって、自分から腰を振らせてオレを求めさせたい。 そんな凶悪な思いが、ここ最近頭の中で巡り巡っているわけで。 (・・・これはさすがにヤバイよなぁ・・・。変態みたいだし) みたいではなく、すでに変態の領域に足を突っ込んでいる自覚はないらしい。 そこでライはぎょっとした。 見下ろした先では、アイクが目を閉じているではないか。 「ちょっ、おい、まさか本当に寝ちまったのか!? オイ、アイク! 起きろって!」 慌てて声をかけるが、アイクは不快そうに眉を寄せるだけで、目を開く気配はない。 まさかコイツ、このまま本気で寝る気なのか!? この状態で!? 思わず正気を疑うが、少し考えて、ライは思いっきり腰を突き上げた。 そこはまだ繋がったままだったので。 「んぁっっ・・・!?」 「お、イイ声」 「っ・・・・・・・・・あんた、死にたいのか?」 恐ろしく冷えた目で見据えられて、内心心臓がすくみ上がるが(なにせこの男、将軍職を務めているだけあってその眼光の鋭さといったらライでさえ震え上がるほどなのだ)、だがここは男として言わせてもらいたい。 「情事の最中に寝るのはマナー違反だぜ、アイク」 なにより俺が悲しいし虚しくなるだろ、とむくれれば、アイクはアイクで不機嫌顔のまま言い返す。 「情事の最中に考え事に浸って俺をほっぽりだしておくのはマナー違反じゃないのか、ライ?」 「ぐ・・・、」 確かに自覚があるだけに反論も出てこない。 ライは誤魔化すように笑って腰を動かした。 「っ・・・、ライッ!!」 「ごめんなぁ、アイク。お前が俺に構ってもらえなくて寂しかったなんて、全然これっぽっちも気付かなかったぜ。ちゃーんと可愛がってやるからな」 「なっ、おい、うぁっ・・・!」 こうなったら、とライは強く腰を押し上げ、激しく攻め入ってやる。そうすれば、アイクは口を閉じて歯を食いしばる。 絶対に、声を漏らさないようにと。 そんなつまらない意地を見やって、ライは笑う。 せいぜいそうして歯を食いしばっているといい。 気付いた頃には、憎たらしい口を利くことが出来ないくらい、俺に夢中にさせてやるさ。 ほの暗い愉悦に浸って、青い尻尾が、ご機嫌にゆるりと揺れた。 |